ひとくちスポット解説
スポット名 | 霧島神宮遥拝殿(廃) |
所在地 | 鹿児島県霧島市牧園町高千穂3927-3 |
御祭神 | 不明 |
説明 | 1965年~1976年の間に建立された神社。 境内には拝殿に加えて近代的なオブジェや手水舎があり、社務所も建っていたが現在は朽ちている。 2013年頃にはすでに管理されていない様子。 |
遥拝殿って?
遥拝殿という言葉があります。
“ようはいでん”と読み、神社から遠く離れた場所でも参拝できるようにした場所のことを指します。これによって、現地で参拝したのと同等の効果が得られるといわれています。
有名なものでは東京都にある伊勢神宮の遥拝殿「東京大神宮」がありますが、鹿児島県の霧島神宮においても同様のものが存在するようです。
・・・いや、正確には「存在していた」と言った方がいいのかもしれません。
実際に行ってみた
2022年12月30日、天気は晴れ。
ここは、霧島温泉郷からさらに坂を上ったところにある硫黄谷の展望台。
霧島連山の中腹に位置するこの場所は、冬になるとこの辺りからチェーン規制がされることもあるそうです。
そこから山側に向かってのびる細い坂道を下ると、正面に屋根が水色の廃墟が見えてきます。
遥拝殿があるのは、そのすぐ右隣。
鳥居は錆びて血のような色合いに変化しているうえ、境内も草が生え放題になっていて完全に荒廃しています。
立入禁止の表示は有りませんでしたが、他の方が訪れた時には立て札やロープで表示があったことから、風化したもしくは強風か何かで吹き飛んだのでしょう…。
境内には、通常の神社ではなかなか見ないような近代的な建築物(オブジェ?)や手水舎があります。
社殿の拡大写真。
屋根は神社に似つかわしくないトタン造りになっているようです。
ちゃんとお賽銭箱も設置されていました。
脇から見た参道。
当時はあの階段を上って参拝したのでしょうね。
鳥居脇にあった社務所跡。
ガラスは派手に割れている上に屋根と外壁の一部は崩れ落ち、室内が露わになっています。
Googleマップによれば、2013年時点ではガラスが一部割れているだけで目立った損傷は無かったので、崩壊はここ数年で一気に進んだとみられます。
窓口と思わしき場所には「霧島神宮 御神符守札授与所」の札があるので、ここでお守りなんかを販売していたのでしょう。
謎のキノコのオブジェと遊具
遥拝殿の前には旧霧島いわさきホテルの駐車場跡がありますが、その土手にはキノコのオブジェが群生しています。
さらに草むらの中には、小規模ながら遊具が置かれていました。
もしかしたらこの土手は昔、ちょっとした公園だったのかもしれません。
遥拝殿の建立時期
いつ建立されたかについてですが、そもそも存在が知られていないのかGoogleで検索しても全部で4件しかヒットせず(2023年1月時点)、いずれもそれに関する有力な情報はありませんでした。
Google Mapの航空写真を見てみると、遥拝殿とその隣に冒頭の廃墟があるのが確認できます。
では次に、過去に撮られた国土地理院の空中写真も見てみましょう。
1965年時点でそれらしき建物は確認できませんが、1976年頃には存在しているので遥拝殿はこの間に建立されたと思われます。
お隣の廃墟も、ほぼ同時期に建設されたものでしょう。
神社を建立したのは誰?
信憑性に欠けますが、僕はこの遥拝殿の正体は“旧林田産業交通の産物”という仮説を立ててみます。
この周辺には霧島いわさきホテル(2017年11月6日閉館)があるのですが、もともとは今は無き林田産業交通の経営する「ホテル林田温泉」でした。
調べてみるとこのホテルは、1962年頃~1968年前後?のどこかで浴場や客室などの大規模な増築・ホテル周辺に噴水や彫像などの設置を行ったといわれています。
この時期ならば国土地理院の空中写真と辻褄が合うので、もしかしたら遥拝殿はこの一環で建立されたのかもしれません。
また、昭和末期に刊行されたホテル林田温泉のパンフレットには、ホテルのその他施設に関する案内項目があるのですが・・・。
「その他」
「国立公園 霧島 ホテル林田温泉」 より一部引用
ボウリング場・ショッピングコーナー・ゲームコーナー・会議室・美容室・理容室・アイススケートリンク・サンスカイパーク・霧島神宮遥拝殿・地下大駐車場
そこには霧島神宮遥拝殿と記載されていることから、もともとホテル林田温泉の所有する施設だった可能性が高いです。
平成8(1996)年に林田産業交通は倒産し、翌年にいわさきグループ傘下の下で霧島いわさきホテルとして生まれ変わりましたが、当時のウェブサイトをウェイバックマシンで確認してもそれらしい記述は見られなかったので、もしかしたらこのタイミングで遥拝殿は放棄されたのかもしれません。
ホテルから遥拝殿までは歩いて5分ほどの場所にあります。もしこの推測が外れていたとしても、少なからず参拝客はいたことでしょう。
しかし、ホテルや参拝客、管理する者も消えた今となっては、ただ静かに自然に吞み込まれるのみです。
今日のあとがき
赤錆びた鳥居には魅かれましたが、色々と謎だらけな場所でした。
廃神社同然なので、参拝はお勧めできません…。
スポット情報
スポット名 | 霧島神宮遥拝殿(廃) |
所在地 | 〒899-6603 鹿児島県霧島市牧園町高千穂3927-3 |
駐車場 | 無し |
トイレ | 無し |
現状 | すでに廃神社となり、荒れ果てている。 |