紫尾峠とは?
鹿児島県薩摩郡さつま町から出水(いずみ)市へ抜けるルートに、国道328号線の「紫尾(しび)峠」があります。

この峠を越すルートがが現在のものになったのは1989年のことですが、それ以前は大型車の通行が困難なほどに道幅が狭く、ひたすらカーブや坂道が連続するような状態だったといいます。
それでも、当時はその道がれっきとした国道であった訳で…。
今回は、かつて国道328号線としての責を果たした紫尾峠の旧道を走った時の様子をお届けします!

先に結論だけ書いておくと、二度と走りたくない酷道でした…。
旧道を走る
2025年6月8日、天気は雨。


今回はさつま町側から走ることに。
旧道ですが、2025年現在では以下のような位置づけとなっています。
さつま町側の分岐点から5.7km先の交差点までは、町道「尾座原(おざばる)紫尾線」。
そこから先の出水市側までは、県道397号「鶴田定ノ段線」に指定されています。
まずは町道区間から!
何でもありの町道区間


旧道に突入して1~2分、状況はこんな感じです。
- こぶし大の落石・倒竹多数
- 雨などで路面が浸食され、周りは穴ぼこだらけ
- アスファルトはほとんど落ち葉で覆われている
- ガードレールが大して無い
道幅の狭い上り坂なのも相まって、スピードは出せても時速10km前後。
旧道は11.2kmあるので、何事も無かったとしても1時間はかかりそうです。


大きめな枝の塊が道路のど真ん中に落ちているなんてことも。
ここら辺から「とんでもない道を選んでしまった」と後悔するようになります。


さらに進むと、それなりの規模で路肩が崩落していました。
申し訳程度に置かれた転落注意のコーン類から何とも言えない頼りなさを感じます。


しかも谷底には別のコーンが落ちているので、おそらく崩落は現在進行形。


…その目と鼻の先は、枝というより幹で道の半分が塞がれていました。
こんなものが走っている最中に落ちてきたらと思うとゾッとする…。
幸い側溝は無かったので、端までかなり寄せて突破。


その次に待ち受けていたのは、尋常ならざるほどに侵食され削られまくった路面。
車が四駆であればもしかするかもしれませんが、僕みたいな二駆ではこの段差の攻略にも一苦労。
何度もタイヤを空転させては「VSC(横滑り防止機能)が作動しました」といった見慣れないメッセージが表示され、結果的に10分ほどかけて脱出成功。
その代償にバンパーの底が削られたのは言うまでもありません。




その後も洗礼は続きます。
序盤からこれ位荒れていたなら諦めて帰れたけど、既に1時間近くかけてここまで来た訳だし今更戻りたくない。
特にスタックした所をまた通るなんて絶対嫌だ…と思いつつゴリ押しで突破しました。
しかし、いったい月に何台の車がこの道を通るのでしょう。
一応現役のはずですが、こんなの廃道に等しいです。




…と言っている間に、町道区間はラストスパート!
ぽつぽつと土砂崩れはあれど、最初と比べれば道路のデコボコもほとんど無くなり、わざわざ枝や石を退けに車を降りることも無くなりました。
このままの勢いで県道区間へ合流できそう…


と思っていた時期がありました
最後の最後、県道区間の10m手前にして大きめの朽ちた幹が道路を封鎖。
そんなことある?
快適に思える県道区間


気を取り直して、ここから先は県道397号線を北上していきます。
道の狭さやカーブだらけなのは変わりませんが、道路状態が段違いに良い!
最近除去作業が行われたのか落石や倒木と出くわすことは無く、それまでの荒れ模様が嘘みたい。


県道区間に入ってからおよそ5分後、町境に到達。
ここから先は出水市です!


すぐ手前に潜んでいた重量制限の標識。
8トン車・長さ9m以上の車は通れない旨のものですが…昔はそれに匹敵するくらいの大型車もここを通らざるを得なかったことを窺わせます。




さつま町の方はこんな感じ。
こちらは足元に「宮之城街道 分岐点」と刻まれた標柱がありました。


このあとの道はずっと下り坂。
さっきと比べると落ち葉が多くなったものの、走行に支障をきたすほどでは無かったです。
旧道走破!


旧道に入ってから1時間28分、ついにもとの現道へ戻ってきました!
道のりがやたら長かった…。
いくらスタックとかで時間を費やしたとはいえ、現道だと10分で同じ区間を走れることを考えると僕は一体何をしていたんだろうと感じてやみません。
一応記しておくと、旧道に入ってから出くわした後続や対向車は皆無でした。
強いて言えばたまに鹿が出るぐらいで、人間の気配は全くなし。


旧道は全体的に道が狭く、車同士のすれ違いは待避所が無いと厳しいですが…その中でも県道区間は比較的状態が良い方なので、とりあえずは走行可。
それなりに国道時代の標識類もあるので、当時の様子を垣間見れる区間でもあります。


ただし町道区間はそれとは比じゃないレベルの荒れ様で、至るところで落石や倒木がそのままの状態で放置されています。
アスファルトの状態もかなり悪く、場所によっては路肩が崩落しているところやひどい段差が生じてしまっています。
最近利用されている形跡も見当たらず、管理もほぼされていないような雰囲気なので、町道はもう封鎖してしまえと車にできた擦り傷を触りながら八つ当たりするのでした。
余談ですが







現道が開通して大幅な時短になったとはいえ、その道もまだまだ急カーブが多く、冬場は積雪や凍結に見舞われるような道。
そこで、2000年代ごろから峠越え区間をトンネルで一気にショートカットしたらどうかという話が出始め、2024年には「国道328号紫尾峠トンネル整備促進期成会」も結成されました。
もし実現すれば今以上の時短になり、冬場の通行規制の機会も減るかも…?
スポット情報【2025年6月時点】
スポット名 | 紫尾峠(旧道) |
所在地 | 〒895-1807 鹿児島県薩摩郡さつま町平川~ 〒899-0215 鹿児島県出水市武本 |
通行可能時期 | 通年通行可 |
現状 | 供用中。 現県道397号線の区間は道幅が狭いのみだが、町道の区間はそれに加えて倒木や落石、路面の浸食が著しい。 町道区間の通行はおすすめできない。 |